『 研究者達も、椿煌の両親も…警察に捕まったよ。だからもう大丈夫。 』

「 え、本当に…? 」

『 あぁ。椿煌が研究者達から逃げ出してから、警察も椿煌のことを行方不明者として必死に探してくれてる。研究者達と両親も何も話そうとしないから、見つかったら椿煌から詳しく話を聞く、って……その後のことは、俺がなんとかしますって言っといたから。 』




…よかった。研究者達も、両親も、もう私に関与することは無い。

あの人達が何も話さないのなら、この花咲き病のことは、世間にも暒くんにも、まだ知られていないはず。
この身体を利用されることもないし、これからの人生に絶望することも、もうしなくていいんだ。




『 …よし。何か食べたら、警察に連絡してここに来てもらう。思い出したくないことは無理に思い出さなくてもいいから、自分の話せることだけ話せよ。 』

「 うん、分かった。 」




懐かしい香りが、懐かしい景色が、一瞬にして安心となり私を包み込んだ。


柊空さん達を思うと少し寂しいけれど、戻ってこれたことが嬉しくて。
そして何より、暒くんに会えたことが、本当に嬉しくて。

自然と笑みが零れると、暒くんは私を見て、少し不思議そうにしながら口を開いた。




『 …つか、その服。この辺じゃ見たことないけど、どっかの病院に入院でもしてたのか? 』




…そうだ。緋衣先生の所の病院に居たから、このパジャマのままお散歩に行ったんだっけ。
そのままトンネルを見つけてここへ来たから、そのままの服装だったんだ。




「 えっと…話したら、凄く長くなっちゃいそうで。 」




さすがに " 未来に行ってた " とは、まだ言えない。


暒くんにこの不思議な出来事を話すのは、もう少し時間が経ってから、落ち着いてから。いつもの日常を取り戻してからにしよう。