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『 …びっくりした。あの日以来、何度も椿煌が逃げていった所へ行って探したんだよ。ちっとも見つからなかったのに、今日、そこに椿煌が倒れてたから。 』




しばらくしてお互いが落ち着きを取り戻すと、暒くんはゆっくりと話し始めた。


どうやら、私が未来に行ったあの日。
暒くんに助けを求める為に街へ出てきたあの時、彼は私の姿を見つけてくれたらしい。私の後を必死になって追いかけたものの、見つけることは出来なかった、と。
そしてその日から約一週間が過ぎた今、その場所に私が倒れていた。

…未来に居る時と、過去に居る時。どちらも同じように時間が進んでいる訳ではなく、やはり時差があるみたいだ。
私自身の時間の感覚では、未来で過ごした時間はたったの二日半。それなのに、過去では一週間が経過していた。
それなら、過去で時間を過ごしている間。未来では、一体どのように時が流れているのだろう。
もしかしたら同じかもしれないし、その時その時によって違うのかもしれない。



そっと窓の外を見てみれば、桜の木が風に揺られている。
…変な感じ。さっきまで、未来では雪が降ってたのに。




『 なぁ、今までどこに居たんだよ。身体は大丈夫か?何もされてないか? 』

「 大丈夫、誰にも何もされてないよ。…それより、研究者達は? 」




…そう。私が一番心配だったのは、これだ。

私を売った両親が、私を実験台に使おうとした研究者達が、今どこで何をしているのか。
あのトンネルが目の前に現れた時は、暒くんに会いたい一心でそんなことなんて考えていられなかったけど…でも、今思えば思い切ったことをしたな、と自分自身でも思う。


教えて、と彼の手を握ると、暒くんは『 分かった。 』と、小さく口を開いた。