「 振り向いた時、私が居なくなってたら…過去に戻ったんだ、って思ってて欲しい。 」

『 え…。 』

〔 駄目だよ柊空、振り向いちゃ。 〕




柊空さんの背中が不安げに動くと、緋衣先生がそれを優しく撫で、私の言葉に頷いた。

もっとこの時代で柊空さんとお話したかったし、緋衣先生が教えてくれた治療法で、この病気を治したかった。




「 でも…私、また絶対に来るから。緋衣先生とも、柊空さんとも、ずっと会えなくなるなんて…そんなの嫌だから。だから…、 」




そう、大丈夫。きっとまたトンネルは現れるし、私が強く思えば、またここへ来られるはず。


柊空さんとも話したいことは沢山あるし、緋衣先生にも聞きたいことは沢山ある。でも私は、まず暒くんに会いに行かなくちゃいけない。

会って、話をして、この病気のことを話して…。




…だから、その時が来るまで。














「 …戻って来るまで、待ってて。 」









二人の頭が縦に動いたのを確認して、私はトンネルの中へと入り、思い切り走り出した。
聞こえてくるか聞こえていないかなんて分からないけれど、大きな声で「 いいよ。 」と叫んで。






『 …椿煌ちゃん。 』

〔 大丈夫だよ。きっと、すぐ戻って来るから。 〕






‪その声が二人に届いていたのも知らず、二人の寂しげを帯びた声が私に届くこともなく。‬




私はただ、過去へ向かって走り続けた。