「 び、びっくりした…。 」

〔 あー、もう。びっくりし……柊空、鼻水。 〕

『 えっ?!ちょ、ティッシュティッシュ! 』

〔 ティッシュ?えっと、確か運転席の…。 〕




そして、二人が車の中に目を向けた時。

私に背を向けた時、一瞬にして、背後から漂ってくる気配。
瞬時に後ろを振り向くと、目の前にある壁には、何やら黒い渦のようなものが現れていた。



…何、これ。




「 ねえ、二人共……あっ。 」

〔 どうしたの? 〕

『 へ? 』




私が呼ぶと、柊空さんの鼻にティッシュを当てた緋衣先生と、鼻をかんでいた柊空さんがこちらを振り返った。
でもその瞬間その渦は消えてしまい、私の中にある疑問が、少しずつ確信に変わっていくのを感じる。




「 私が、いいよって言うまで…振り向いちゃ駄目。 」

『 え…どうして? 』

〔 …分かった。 〕




私の言葉に不思議そうに首を傾げる柊空さんと、何かを察したようにして頷く緋衣先生。
何が何が、とよく分かっていない柊空さんに、緋衣先生は〔 ほら、ちーんってして! 〕と言いながら、私に背を向けた。

そんな二人を見てから壁を振り返れば、また現れた渦。
それは少しずつ大きくなっていって、ついに私の前に姿を現した。




「 ……やっぱり。 」




この時空間の歪みは、私の前にしか現れないんだ。

目の前に現れたのは、あの時過去に通ったトンネルと似たようなもの。振り返って二人を見てみれば、こちらを見ず、ずっと私に背を向けてくれている。




…ここを通れば、過去に戻れる。暒くんに会える。

二人は私を助けてくれたし、柊空さんは私の友達になってくれた。だから二人と離れ離れになるのは寂しいけれど、きっとまた、このトンネルは現れるから。