それに頷きながら一歩一歩足を進めると、目の前には壁があって。



……どこにも、トンネルなんてない。




「 おかしいな…。 」




確認する為にその場に寝そべって景色を見上げてみると、確かに昨日気を失う前に見た景色と同じで。
チラホラと通りかかる人にジロジロ見られて慌てて起き上がると、柊空さんに『 トンネル、あった? 』と聞かれた。




「 …やっぱり、無くなっちゃってるみたい。 」




彼の言葉に首を横に振ると、緋衣先生が〔 トンネルって、ここへ来た時の? 〕と言いながら、私の身体についた雪を払ってくれた。




「 あの…私がここに倒れていた時。その時にも、トンネルの入口のようなものって…ありませんでしたか? 」

〔 うーん…柊空、どうだった? 〕

『 えっと…多分、無かったと思う。僕が見つけたときには既に椿煌ちゃんが倒れてたし、周りにも沢山人は居たから。 』




数少ない通行人達が通り過ぎると、ここに居るのは私達だけになってしまった。


広く都会のような街で、私達だけ。

遠くにはいくつか人が見えるものの、この街は、夜にならないと人があまり集まらないとのこと。だから昨日も、ここへ散歩に来ていたらしい。
ここはBARだったり、過去で言う居酒屋だったり、仕事終わりのサラリーマンが夜に楽しむような街なのだと言う。



…もしかしたら、トンネルって。




『 ……ぶぇッくしょい!!さ、さむ…。 』

「 ?! 」




誰も見ていない時、誰の目にも入らない空間に現れるんじゃないか。

なんて思った時、柊空さんの爆発したようなクシャミがその場に響いた。
びっくりして肩を震わせながら振り返ると、寒そうに震えながら鼻水を垂らしている柊空さんが居て。