『 ねぇ、本当にやめなくていいの? 』




吐息が微かに響く中、魅月さんは私にそう聞いてきた。
こうやって聞いてくるのはいつもの事で、私もいつものように頷く。

きっと、もうこのことはみんな知ってるんだろう。


私の頷きに、魅月さんは少しだけ笑う。それは、游鬼さんがいつも見せる笑顔ではなく、この遊びをしている時だけ、魅月さんが見せる笑顔だった。
どこか引き攣っていて、苦しそうで、寂しそうな笑顔。
見ていると私まで苦しくなってしまいそうで、その顔を見ないように、そっと魅月さんの首に腕を回し、引き寄せた。

ふわふわな髪が首元に当たって、少しだけ擽ったい。



魅月さんが腰を動かすと同時に、私の口からは、だらしない吐息が何度も零れた。

やめなきゃ、こんなこと早くやめなくちゃ。そんなことは、もうずっと前から分かってる。
こんなことをしていても、私達は何も変われない。

だけど、やめられない。


戻れない所まで、来てしまったから。




『 ごめんね、ちょっと乱暴しちゃった。 』




行為が終わった後、私は息を整えながら壁を見つめていた。もう、あの苦しそうな顔は見たくなかったから。
でも、そう言った彼の声は游鬼さんに戻っていた。

大丈夫、とだけ告げると、游鬼さんは何も言わなかった。少しすると、喉が乾いたと言って部屋を出た。
それが嘘なのかは分からないけど、この空間から逃げたことには変わりない。

だから私も、游鬼さんが出ていった後に自分の部屋に戻った。


明日は烏禅くんとの仕事もあるし、内容をまた確認しておかなくちゃ。そう思って携帯を開き、晴雷さんから貰った情報を確認していたんだけど…。




「 …あ、最悪。 」