なのに、今こいつからは " 苦しみ " と " 怒り " を感じる。




…いや。正しく言えば、憎しみ?




感情を、微かにだけど顕にした狂盛を見て、少し余裕が出来てしまったのかもしれない。それとも、逆に追い詰められて焦ってしまうような気がしたのかもしれない。

それは、分からないけど。




『 …そんなことしても、愛なんて、知れるわけがないじゃないですか。 』




でも狂盛は、それの胸ぐらから手を離して、そう言いながら笑った。

既に自覚している事実に、嘘臭い笑顔。
まるで、自分の感情を隠すかのように貼り付けられた笑顔。


俺の真似をしていると、嫌な程に伝わってきた。




『 游鬼さんよりも、烏禅くんの方が紅苺に愛を教えてあげられるんじゃないですか? 』




その言葉を聞いた瞬間、俺は衝動的に狂盛の胸ぐらを掴んだ。黙れ、と、自分でも聞いたことがないくらいの低い声で。

衝動的にしてしまったからか、自分でも少しだけ驚いていた。
狂盛を睨むこの目も、怒りで震えるこの拳も。


そんなこと、俺だって分かってる。
こんなこと、俺も紅苺ちゃんも、幸せになんかなれない。



狂盛が…泪が、親から充分な愛を注がれて生きてきたことなんて知ってる。血は繋がっていない親だけど、確かにこいつは愛されてきた。
それなのに、愛が理解出来ないたとか、何だとか。


俺は、俺は。




「 俺と紅苺ちゃんの遊びなんだから、狂盛には関係ないよね。 」




そう言って、笑った。
父親に殴られて、泣き叫んでいた頃の自分を殺すように。

あの頃の自分を、殺すように。




『 …そのままじゃ、愛なんて一生、 』




その言葉の続きは、どうしても聞きたくなかった。




「 それは狂盛でしょ? 」