『 皆、聞こえる? 』
そして、麻薬取引が行われている部屋の扉の前まで来た時。耳にはめられた無線から、晴雷さんの柔らかい声が聞こえてきた。
紅苺さんがつけているネックレス型カメラの映像を見ているからか、その声は、いつもと同じように落ち着いている。
皆で耳を抑えながらその声に集中し、雑音を消すようにして、息を殺した。
『 僕が合図をする。合図を聞いたら、一斉に扉を蹴り破って突入するんだ。 』
晴雷さんの言葉に、紅苺さんは " 了解 " と答えるようにして、無言のままネックレス型カメラをトントン、と叩いた。
それからしばらくして、息を潜めて。
『 ………………今だ。 』
_____ ガァンッ!!
無線に、いつもよりも真剣で小さな声がポツリと落とされた瞬間、游鬼さんと狂盛さんが目の前の扉を蹴り飛ばした。
中から男らの焦る声が聞こえてくれば、游鬼さんは楽しそうに首の骨を鳴らして笑った。俺は游鬼さんの後ろに、紅苺さんは狂盛さんの後ろに身を隠す。
游鬼さんはお得意のナイフ、俺と紅苺さんは拳銃、狂盛さんは、指の骨をコキコキと鳴らした。
〔 お兄さん達、袋の鼠も同然だね? 〕
〔 麻薬取引なんて物騒なこと、やっちゃ駄目だろ~! 〕
向かい側の扉からは、滴草さんと青葉さんの声が聞こえてくる。
どうやら彼らも同時に突入したようで、一人はニッコリと笑い、もう一人は声を上げて笑った。
物騒、だなんて。俺らが今からする仕事の方が、よっぽど物騒だってもんだ。
[ な、なんだお前ら! ]
[ …まさか、こいつら! ]
袋の鼠達が俺らの名前を上げる瞬間、狂盛さんがその男の顔を乱雑に掴み、歪な方向に曲げてしまう。