あれから数日後。時の流れは早いもので、あの二人と仕事をする日がやって来た。




『 僕は皆より少し遅れて現場に行く。烏禅は游鬼と、紅苺は狂盛と一緒に、常に二人で固まって動くんだよ。 』

『 はい、分かりました。 』




皆がアジトでそれぞれの準備をしている時、晴雷さんは、スーツのネクタイを締めながらそう言った。

游鬼さんは紅苺さんに化粧を施しながら、紅苺さんは大人しく化粧をされながら。狂盛さんはパソコンと向き合っていて、俺は、スマホのゲーム画面と向き合っていた。
それは、游鬼さんが紅苺さんの唇に " 紅 " を落とすのを。どうしてもそれを、見ることが出来ない…いや、見たくないからだ。

あの印象的な紅い唇を、游鬼さんが紅く染めている。
彼女は大人しく、游鬼さんとキスしているであろう唇を紅く染められる。


…苦しかったんだ、何となく。




『 はい、出来上がり~。 』

『 ありがとう、游鬼さん。 』




どうやら化粧が終わったらしく、俺もゲーム画面を閉じて椅子から立ち上がった。

黒いスーツに身を包んだ晴雷さんと狂盛さん。
游鬼さんはいつものような白い大きなワイシャツで、俺もいつもと同じ、黒のパーカーだ。
紅苺さんは真っ白な服に身を包み、その唇の紅が、更に惹き立てられている。




『 今日は僕が運転するから。 』

『 了解。晴雷さん、気を付けてくださいね。 』

『 大丈夫だよ。最後に、相手が油断したところで飛び込むから。 』




車のキーを持ちながら玄関へ向かう狂盛さんについて行くと、紅苺さんは心配そうにそう言っていた。
いくら頼もしい晴雷さんだからと言って、やはり仲間である彼のことが心配なのだろう。

…それは、俺だって同じだ。