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そして目の前には放心状態で座り込む、返り血で紅く染まった彼女が居る。


晴雷さんが新しく拾った仕事仲間だ。
晴雷さんは、その女を " 紅苺 " と名付けた。

紅苺は震える手で引き金を引き、目の前にいるターゲットを殺した。





彼女にとって、初めての殺しだ。



渢さんと話をする晴雷さん達を横目に、僕は紅苺のそばに行き、そっと隣にしゃがんだ。




「 ね、出来たでしょ。 」




僕がかつて彼女に投げかけた言葉を思い出し、そう言った。

すると彼女は、小さく頷いた。
それと同時に、真っ黒な目からポロポロと涙を零す。どんどん顔を歪ませて、綺麗な顔が、涙によって濡らされた。



…涙、か。


笑うことも、怒ることも、人を殺すことも。全部、他人の真似をすれば簡単に出来た。

でも、どうしても涙を流すことだけは出来なかった。
どうして、涙を流すことが出来るんだろう。


どうして彼女は、人を殺して涙を流しているんだろう。




気が付くと、僕は紅苺の涙を拭っていた。そして、涙で光った目が僕を捉えた。





「 僕も、君の真似をすれば、泣くことが出来るかな。 」





なんて、気がつけばそう口にしていた。

紅苺は不思議そうに僕を見てから、頬に触れたままの僕の手に綺麗な手を添えて、ギュッと握る。








「 ……泣けますよ、きっと。 」







…あぁ、ありがとう、紅苺。

いや、紗來。