『 紅苺。奥の部屋が一つ余ってるでしょ?そこ、烏禅くんに案内してあげて。 』

『 分かりました。烏禅くん、おいで。 』




綺麗な声で " おいで " と言われて、思わず色っぽさを感じてしまう。その言葉に頷きで返事をし、俺は彼女の後についてリビングを出ていった。

階段を登って二階に来ると、晴雷さんが言っていた、一番奥の部屋に案内された。
ベッドや机、それなりに寝れるようなスペースや物はある。




『 ここが烏禅くんの部屋だよ。隣が私で、その向こうが游鬼さんと狂盛さん。 』

「 晴雷さんの部屋は無いんですか? 」

『 晴雷さんの部屋は、一階の奥。まだ私も入ったことないんだけどね。 』




アジトにしては立派で広い家だな、と思いながら部屋を見渡す。

持っていた拳銃をベッドに投げ捨てると、紅苺さんはそっと窓の方へと近づいた。
窓をそっと開けると、白いカーテンが風によってふわりと膨らんでいく。それが彼女の姿を隠し、やがて静かに元通りになった。


綺麗だ、と思った。月明かりに照らされた横顔が、こんなにも美しい女性がいるなんて。
真っ赤な唇は誰が見ても綺麗なもので、誰が見ても一番似合っているものだった。




『 しっかし…もうすぐ二十歳になるって言うのに、引きこもりのニートかぁ。 』

「 ?! 」




その言葉に思わず目を見開くと、彼女はこちらを見てひひっと笑った。
どうして俺の歳も、俺が引きこもりだってことも、ニートだってことも知ってるんだ?




『 狂盛さんは、なんでも出来ちゃうからね。 』

「 …個人情報ですよ。 」

『 ふふ、昔の私みたい。なんだか懐かしいなぁ…。 』




紅苺さんの言葉に顔を引き攣らせながらそう言うと、彼女は寂しげに微笑んだ。

昔の私、か…。それは、あの頃の彼女だろうか。