「 …………ケホッ…。 」




しばらくすると、眠りについたはずの紅苺が、小さな咳をした。

紅苺だけじゃない。
少しずつ、時間が経つに連れて、安らかな顔で眠っていた四人は、次第にその顔を歪ませ、あまりの息苦しさに目を覚ました。




「 …………晴雷、さん…? 」




重たい体を起こした紅苺は、縁がガムテープで覆われた窓の外を見つめる、晴雷の名前を呼んだ。
しかし、その背中が動くことはなく、ただただ寂しげを帯びたまま立ち尽くす。

游鬼と狂盛がゆっくりと体を起こすと、烏禅は大きな咳をした。



今まで感じたこともないような、強烈な息苦しさ。




「 ゲホッ……そ、ら…さん……、なに…して…、 」




そう言いながら部屋の隅に目をやった烏禅は、そこに置かれた練炭を見つけた。

窓だけではなく、扉の隙間までしっかりとガムテープで覆われた部屋の中。




「 晴雷さん、なに、これ……ゲホッ…。 」




意識が朦朧とし、足元が覚束無いままその場から立ち上がった游鬼は、今度は別の意味で目を虚ろにさせながら晴雷にそう聞く。
狂盛も壁を掴みながら、込み上げてくる咳を抑えるようにして立ち上がった。
烏禅は本能的にベッドに這い上がり、力の入らない手でそっと紅苺を引き寄せた。


そして、四人が晴雷の背中を見つめた時。

その背中がゆっくりと動き、焦点の合わない目が、その四人を映した。






「 …魅月。 」






その名前に、游鬼…いや、魅月は目を見開いた。






「 泪。 」






その言葉に、泪も驚いたような様子を見せる。






「 紗來。 」






紗來は、何も言わずに晴雷を見上げた。






「 翔湊。 」






翔湊は、状況を理解出来ずに晴雷を見上げていた。