生まれてから一度も、幸せや楽しさなんて感じたことがなかった。
何をしても続かないし、何をしていてもつまらない。唯一気が紛れて続けられることは、ゲームくらいだ。
射的ゲームにハマっていて、部屋にこもって一日中ゲームをして過ごすことも少なくない。
高校は二年間と少し行き続けたものの、面倒になって辞めてしまった。
クラスでもそんなに目立つタイプじゃなかったし、むしろ、影で色々言われてただろう。
[ 翔湊、いい加減部屋から出てきなさい。 ]
部屋の外から聞こえる声に、思わず舌打ちをしてしまう。
…でも部屋の中も飽きてきた頃だし、そろそろ外に出てみようか。
重たい体を起こして扉を開けると、そこには目を丸くした母の姿があった。
部屋から出ることなんて滅多にないから、きっとすんなり扉を開けたことに驚いているんだろう。
[ あら…やけに素直ね。晩御飯出来たわよ ]
「 いらない、出掛けてくる。 」
これがきっかけだった。
顔を隠すように黒いパーカーのフードを被り、向かった先はゲームセンター。こんなところに入ったのは初めてで、思わず「 うるさ…。 」と顔をしかめる。
銃を使うゲームをしている中学生を見て、自分もやりたくなってきた。だから中学生がどいてから、一人なのを気にしずにゲームを始める。
あ…部屋でやってたゲームより少しいいかも。
気が付けば財布の中の小銭は空で、両替をしに行こうとしていた時。
[ おー、お前見ねぇ顔だな!高校生か? ]
げ、絡まれた。しかも不良に。
耳にはピアスをジャラジャラ付けていて、髪の色が派手な人もおり正直見苦しい。
無視すると面倒なことになりそうだったので、とりあえず俺は小さく頷いた。