『 あー、うま。このまま麦酒飲んじゃおっかな。 』

「 まだお昼ですよ。 」

『 いいじゃんいいじゃん、もう仕事は終わったんだからさ〜。 』




游鬼さんはまた私の言葉を無視して立ち上がり、今度は冷蔵庫の中から冷えた麦酒を取り出した。
プシュ、と蓋を開けて一口飲むと、また美味しそうに『 あー、うま。 』なんて息を吐く。

そのまま私の隣に腰を下ろすと、ポケットから取り出した携帯を私に差し出した。
その画面には一人の男が映っていて、それが誰なのかは分からない。見たことの無い男だった。




「 誰ですか?この人。 」

『 桜翅。孤独な殺し屋だとかなんとかって、渢さんか晴雷さんから話聞かなかった? 』

「 …聞きました。 」





白に近い金髪に、鋭い目付き。この人が、ミンホさんの言ってた孤独な殺し屋、桜翅 心。
思っていたよりも怖そうな人で、それでいて、どこか寂しそうな人だった。




『 晴雷さーん、渢さんから連絡来た? 』

『 渢さんから?まだ来てないけど…游鬼の所に来たの? 』

『 うん、これこれ。 』




游鬼さんはキッチンにいる晴雷さんに話しかけ、それを聞いた晴雷さんがこちらへとやってくる。『 また飲んでるの? 』なんて言いながらも、晴雷さんは游鬼さんの携帯の画面に視線を移した。

桜翅の画像を見てからそれをスライドさせると、何やら、依頼文のような文字がずらりと並べられている。
私もそれに少しだけ興味を抱き、そっと画面を覗き込んだ。




『 …うん。要するに、やっぱり桜翅が渢さんのことを狙ってるってことなんだね。 』

『 そうそう。で、今度渢さんの会社のパーティがあるでしょ?そこに奴も来るから〜…、 』

「 渢さんが殺される前に、私達で桜翅を殺す…ですか? 」