『 渢さんも、も厄介なのに目をつけられたね。 』と続けると、晴雷さんはそっと立ち上がった。そのままキッチンへ向かい、私に『 ココア?コーヒー? 』と聞いてくる。
それに対して私がココアと答えると、晴雷さんは笑って返事をした。
夏だからと、冷たいアイスココアを差し出される。
晴雷さんはアイスコーヒーを作っていて、相変わらず、こういうものが好きだな、と思った。
『 そうそう、狂盛とは仲直り出来なかったみたいだね。渢さんが僕に謝ってきたんだよ。 』
「 …申し訳ないです。悪いのは、私なのに。 」
『 紅苺は悪くないよ。悪いのは、君に歪んだ愛を注いだ彼だ。彼の愛が真っ直ぐなものだったら、こんなことにはなっていなかったのかもしれない。 』
「 …愛? 」
私がそう聞き返すと、晴雷さんは一瞬だけピクリと動きを止めた。まるで、その言葉が彼に触れてはいけないもののように。
晴雷さん?と声を掛けると、彼は『 ん? 』と、何事も無かったかのように笑ってコーヒーをひと口飲む。それに少しだけ違和感を覚えながらも、私もアイスココアを一口飲んだ。
冷たくて甘い味がジワリと染み込んで、暑い夏にはピッタリのものだった。
それからしばらくすると、游鬼さんと狂盛さんが仕事から帰ってくる。
少しだけ鉄の匂いを纏い、帰ってくるなり『 暑い〜。 』と、クーラーの温度を下げる游鬼さん。狂盛さんは何も話さずに脱衣所へ向かい、晴雷さんは『 下げ過ぎだよ。 』と、游鬼さんを注意していた。
「 飲みます?アイスココア。私の飲みかけですけ…、 」
『 飲む飲む、ちょーだい。 』
游鬼さんは、私の言葉を最後まで聞かずに、ゴクゴクとココアを飲み込む。
どうやら外が暑かったようで、冷たいアイスココアが凄く美味しいみたいだ。