私の目は何度もそれらを往復するけれど、狂盛さんの目は、私からピクリとも動かなかった。







『 人を殺せない君に、何が出来るの? 』







………答えることなんて、出来なかった。
まるで、言い返されているような気分にもなったから。

狂盛さんが佐野くんを殺した時、私は彼に「 どうしてそんなことが出来るんですか? 」と聞いた。でも狂盛さんは、私に『 何が出来るの? 』と聞いた。


私は……私には、




『 何も出来ない。そうだよね? 』




頭の中に浮かんだ答えと、狂盛さんの発した言葉は全く同じものだった。悔しくて頷きたくなかったけど、間違いなくその言葉は当たっている。
手の力をギュッと強くすると、狂盛さんは私から手を離した。

行き場を失った手が地面に吸い込まれ、手の平に、冷たい感覚が広がる。




〔 …狂盛。 〕

『 はい。 』

〔 はい、じゃなくて!今の言い方は酷いと思うな〜。 〕

『 …そうですか。 』

〔 ったく、仲直り作戦失敗だな〜。 〕




渢さんの言葉にも、狂盛さんは温度のない声で答えていた。それはきっと無意識なもので、彼の中には、感情というものが無いのが当たり前なのだろう。

渢さんは倒れた男を蹴って、死んだことを確認する。
するとそのまま私の方へやってきて、そっと私に手を差し伸べた。




〔 立てる? 〕

「 …すみません。 」




私はその手を借りて、ゆっくりと立ち上がった。

渢さんは私の膝や手についた小石を払ってくれて、小さくごめんね、と謝る。
どうして渢さんが謝るんだろう、と思っていた時。




『 あの人じゃないですか? 』

〔 うん、そうだと思う。きっとあいつのことだ、自分でやれ、とでも悪知恵を入れたんだろうね。 〕