ちょっと辛いことがあった。



いや、ちょっとじゃない。



ものすごく辛いことがあった。



でも、涙は出なかった。



不思議と落ち込まなかった。



あまりのショックで、



逆に前向きな気持ちになっていた。



ポジティブになった。



一人で強がっていた。



ありのままの気持ちを



一心に受け止めてしまうと、



心は壊れてしまう。



それを防ぐため、



あえて真逆の気持ちを作り出して



本当の感情をどうにか誤魔化すという



自己防衛本能が働くらしい。



そして、私は生き急いだ。



生き急いだのだ。



とにかく、おかしなことをやった。



仕事終わり、意味もなく空港に行った。



飛行機をなんとなく見て、



なんとなく帰ってきた。



車で30分かかる場所にある銭湯に、



夜、一人で汗まみれになって



自転車で行ってきた。



お風呂に入ったあと、



また汗まみれになって、



自転車をこいで帰った。