優等生の恋愛事情

三谷くんの隣は、私にとってやっぱり特別な場所。

安心できて、居心地がよくて。

だけど――ふいに、ドキドキしたり、きゅんとしたり。

まだちょっとだけ緊張とかもあるのかも?

でも、まったくこの前ほどじゃない。

こんなふうに心がゆるっと和むのは、三谷くんがもつ雰囲気のせい。

中学の頃からそうだけど、三谷くんはおどろくほど自然体というか。

ゆったりしていて物事に動じないというか。

冷静で、温厚で、寛容で。

包容力があるっていうのかな?

決してむやみに人を責めないし。

でも、言うときは言う感じ?

ぶれないというか、本人も言っていたとおり率直な人でもあるのかな。

そして、協調性もあるんだけど、意外とマイペースだったりして?


「ドーナツでもいい?」


たぶん、私は彼のこういう感じも好きなのだ。


「ドーナツなら僕もガッツリ食べられるし。溝口さんは3時のおやつにもなるかなって」

「うん。ドーナツにしよう」


(ガッツリって、どんだけドーナツ食べるんだろう?)


ちょっと想像するだけで、その楽しさに頬が緩んじゃう。

楽しくて、嬉しくて、わくわくする。

この気持ち、つないだ手から伝わったらいいのに。

彼が纏う優しい空気が、私に想いを伝えるみたいに。


“勉強以外のこと”の記念すべき一つ目は、ふたりでドーナツを食べること。

駅から少し離れたところにあるミスドは、混み具合はそこそこで、席は普通に確保できた。

この店舗はパン屋さんみたいにトレイに取るタイプではなかったので、私たちはショーケースの前の列に並んで順番を待った。


(どうしよう……迷うよ、悩むよ)


こういうときにすぐに決められないのが、優柔不断の悪いとこ……。

私たちの前にお客さんは一組だけで、すぐに順番がまわってきちゃうし。

後ろには次の人が並んじゃってるのに。


「決まった?」

「あのっ、ええとっ……」


三谷くんに聞かれて、いっそう焦る私。

でも、彼はちっとも気にしていないようだった。


「あわてなくて大丈夫だよ」

「えっ」


すると、三谷くんは「よかったら先に」と、後ろの人に順番を譲った。


「なんか、ごめんね……」

「ううん。僕ももう少し考え中」


もうしわけない気持ちでいっぱいの私に、三谷くんは思い切り優しく微笑んでくれた。


「ほんと、いっぱいあって迷うよね。僕なんて今なら全種類いけそうな気さえするよ」


(三谷くん……)

彼の優しさは、ふんわりと軽やかで、そっとさらりと心を包む。

こういう優しさを持っている彼が、私はやっぱり大好きなんだ。