優等生の恋愛事情

とりあえず本屋さんを出た私たち。


「溝口さんは、お昼ちゃんと食べたよね?」

「え?」

「僕、実は食べてなくて」

「ええっ」


だって、時計はもうすぐ3時になるとこだよ?


「だから、何か食べに行ってもいい?」

「も、もちろん」

「じゃあ、とりあえず駅方面で」

「う、うん」


お店を出た瞬間からずっと、心そわそわ……。

手、つなぐのかな?

いつ? どうやって?

それとも、つながない……???

そればっかり気になって、頭の中でぐるぐるしてた。

でも――。


「行こうか」

「あっ、うん……」


(バカだね、私。考えすぎ)


優しく微笑まれて、左手をふわりとをつかまれた。

でもでも――。


(な、なんだろう? ちょっと違和感?)


何がどうなのかはわからないけど……またまた私の考えすぎ? 気のせい?

けど、そうでもなかったみたい。

だって、歩き出してすぐに三谷くんが立ち止まったから。


(あ、なんか考え込んでる)


ひょっとして、三谷くんも何か違うって思った?

でも、何が……???


「ちょっとごめん」

「え?」


三谷くんは、つないでいた手をパッと離すと、反対側の右隣へサッと来て、きゅっと手をつないだ。


「「(ああっ!)」」


瞬間、互いに顔を見合わせた。


「なんかわかった気がする」

「私も」


試しにもう一度、私が右で彼が左にいるパターンで手をつないでみると――。


「「(あぁ……)」」


あー、やっぱりねって感じ。

わざわざ検証とかしちゃうあたりが、なんだか私と彼らしい気がして、思わずくすりと笑みがこぼれた。

私の右手と、彼の左手。

つながる手と手。

今度はもう大丈夫。


「解決したね」

「うん。僕、右側にいたいみたいだ」

「しっくりくる?」

「うん」

「私も」