優等生の恋愛事情

私、かなり落ち着きなくて挙動不審だったと思うし。

「変な奴!」とかドン引きされても仕方ないって思うもん、自分でも。

でも……三谷くんは心配になっちゃうよね

だって、三谷くんだもん。


「私ね」

「うん」


(もうよそう。頑張って平気なふりをするのは)


「緊張、してたの……」

「緊張?」


(素直に“今の私”を伝えよう)


「うん。昨日から緊張してたかも」

「ええっ」


並んで歩きながら、私はぽつりぽつり話をした。


「すっごく楽しみなのに、なのに……なんていうか、楽しみすぎて、ドキドキして……それでもって、今日は今日で――」


言葉で表現するのって、本当むずかしい。

でも、ちゃんと伝えなきゃ。


「三谷くんに、いっぱいドキドキしてた」


嫌なことなんて何もない。

気を遣っていたとかそんなんじゃない。

私が勝手に一人でからまわりしてただけ。

そんな必要、ぜんぜんなかったのに。


「ドキドキしっぱなしで、それをね、気づかれたらどうしようって、そう思ったら、なんか緊張して……」


本当はちゃんと目を見て話さなきゃだと思うけど、それはちょっと無理っぽい。

だから、三谷くんの表情を確かめることもできない。

それでも、隣に感じる気配でちゃんとわかってた。

三谷くんが、意気地なしの私の話を真剣に聞いてくれていること。

とても優しい目をして見てくれているんだろうなってことを。

きっとそう、私が初めて想いを伝えたあのときのように。


「だからね、気を遣って緊張してたとか、そういうわけじゃないの。ドキドキしていたのは――」


一番大事なことを伝えなきゃ。


「三谷くんのことが好きだから」


どうしようもなく照れるけど、この気持ちをわかってほしいって、今は素直にそう思うから。


「好きだから、ドキドキしてたの」