優等生の恋愛事情

外へ出ると夕方の空はまだ明るくて、暑さが肌にじわりとはりつくようだった。


(なんかちょっと、気まずくなっちゃった? いや、私が勝手にそうなってるだけ?)


沈黙が怖くて、私は何か話さなきゃと無理に話題を探した。


「夕方でも、けっこう明るいねっ」


ザ・天気の話……。

ほんっと、自分の話題の少なさに涙が出そう。

そんな私に、三谷くんはやっぱり優しい。


「ああ、本当にね。夏至はとっくに過ぎているから、毎日ちょっとずつ日は短くなっているんだろうけど。それでも、ね」


ちょっと眩しそうに夏空を見上げる三谷くん。

こうして並んで歩けることが嬉しいのに、なんだかちょっと苦しいよ。


「あのね、溝口さん」


(えっ……)


三谷くんは静かに私を見下ろした。


「僕は良くも悪くも率直な性格だから聞いてしまうけど――」

「う、うん」


(な、何かな……???)


「ひょっとして溝口さん、何か気を遣っている?」

「えっ」

「いやさ、ちょっと様子が違う気がして」

「そんなっ……」


“気を遣っている”っていうのは違うと思う。

でも、なんて言ったら……。


私たちは大通りへ続く遊歩道を歩きながら話を続けた。


「ロクちゃんに言わせると、僕ってドのつく鈍感らしいから」

「ドのつく鈍感?」

「そう、だから――」

「……ドドンカン?」


小声でつぶやいてみると、ちょっと不思議で奇妙な感じ?


「なんだか得たいの知れないものみたいだ」


三谷くんは苦笑いしてさらに続けた。


「だから、僕が何か気づけていないのかなと思って……どうかな?」

「あの、それは違くてっ」


(はあー、そりゃあ気になるよね……)