ハルピンの言葉にはっとした。

あの頃は、学校でどうにかやり過ごすので精一杯だった。

周りと距離を置いて、
見えないふりをして、
聞こえないふりをして、
傷ついていないふりをして。

いろんなことに気づかぬふりをして、自分をどうにか保っていたんだ。


「溝ちゃんはあまり考えすぎないほうがいんじゃね? 素直に一緒にいたいと思えるなら、それで今はOKなんだよ。付き合ってみて“何か違う”と思ったら、そんときは仕方なし」


(一緒にいたいと素直に思えるなら、か)


それは心からそう思う。

でも、“あの頃みたいに”って話じゃないもの。


「澤君。聞いてもいい?」

「うん?」

「あのね、“つき合う”とどうなるの?」


ハルピンと澤君は絶句した。


「溝口、あんたって子は」

「溝ちゃん……」

「なんかごめん。でもっ……」


私ってば身もふたもないこと聞いちゃってる? でもでもっ……。


「澤、あんた優しい男友達のよしみで答えてあげなよ」

「マジか!?」

「澤君、マジですよ」


私にぬっと詰め寄られて、澤君は「はいはいわかりましたよ」と降参した。


「つきあうってさ、お互いに“特別だよね”って約束し合うことだろ。で、約束をするとどうなるかっつうと――」

「うんうん」

「特別な二人ならではの特別なことがいろいろ起きまーす」

「いろいろって?」

「溝口、ドSか……」