周りの人たちが忙しく横断歩道を渡っていくのに、私たちだけが歩道の端で止まったまま。

まるで、二人だけが別の時間の中にいるみたい。


「僕、焦ったよ」

「あの……」

「溝口さんと話せないまま帰ることになるかと思って。本当、すごく焦った」

「え?」

「話したかったんだ、ずっと」


道路を渡る人波が過ぎて、ぽつんと残された私たち。


(それって、どういう……?)


その言葉の意味をどう捉えたらよいのだろう? 

今のこの気持ちを、どう言い表すことができるのだろう?


「すごく話したかったのに、どういうわけか加藤さんたちに絡まれてさ」

「“絡まれて”、って……」

その言い方がおかしくて、思わずくすりと笑ってしまう。

まあ、三谷くんにしてみれば確かに絡まれていたのかも。


「ロクちゃんから溝口さんが来るらしいって聞いて。だから来たのに」


(……え? 今、なんて?)