優等生の恋愛事情

私、いつも足をひっぱってばかりで申し訳ないなって気にしていたから。

だから……なんかほっとした。


「私のほうこそ。三谷くんのおかげで、どうにかやれてる感じだよ」


委員会の仕事もそうだけど、それ以外のことでも、私はすごく助けられていた。


「精神的に」なんて言ったら、カタいし大袈裟かもしれない。


でも、うまく言えないけど――三谷くんの正しさとか公平さとか、そういう態度に救われているのだ。それは紛れもない事実。


私が普通に話せる人って――普通っていうのは、自然体でってこと――たぶんクラスで三谷くんだけだもの。


(“三谷くんが女の子だったらよかったのに”って、私はどれほど思ったことだろう……)


「溝口さん。内臓ってこれで全部?」

「えっ」


はっとして顔を上げると、三谷くんがふーむと首を傾げていた。


「足りない気がするんだ」

「うそっ!?」

「たぶん、というか膵臓がない。確実に無い」

「ええっ」

(どうしようっっ)

「全部拾って集めたつもりだったのにっ」

「まいったな。この人、このままだと血糖値のコントロールできないし。エネルギー生産もできなくて死んじゃうよ」

「えーと、膵臓のランゲルハンス島細胞からインスリンとかが分泌されるんだっけ?」

「そう。で、そのインスリンが血液の中の糖をエネルギーに変える、と」

「地味めな臓器だけど役どころは重要そう」

「だね。しかしさあ、ランゲルハンス島ってリゾート地にありそうな名前だよね」

「あー、確かに……って、どうしよう!探さなきゃっ」