横たわる人体模型を挟んで、三谷くんと向かい合う。

準備室にある資料を三谷くんが探してくれたので、作業は順調にいきそうだった。


「資料を見ながらだとわかりやすいね。私、なんで気づかなかったんだろう?」


理科準備室なんだから、参考になる資料なんていくらでもあるに決まっているのに。


「気が動転してたってやつじゃない? だってこれ、一応高価なものだっていうし」

「そうなんだよね。もう、壊れてたらどうしようって」

「溝口さんでも慌てたりするんだね」

「え?」


三谷くんは“心臓”の裏表を丁寧に確かめながら言った。


「いや、いつも落ち着いてるから。なんか意外だなぁと思って」

「ええっ、そんなことぜんぜんないよっ」


私は両手に持った左右の“肺”を振りながら、全力で否定した。


「私、ぼさーっとしてるから、いつも三谷くんに助けてもらってばっかで……」

「そんなことはないよ」

「三谷くんは優しいなぁ」


素直に思ったことを言っただけだった。でも……。


「僕は適当に言ったわけじゃないよ」

「えっ……と……」


(三谷くん???)