優等生の恋愛事情

しばらく歩くとベンチがあったので、ちょっと落ち着くことにした。

私、諒くん、ボックスティッシュ(5箱組)の3人で(?)で並んで座る。

「そうだ、聡美さんにあげたいものがあって」

「え?」

「ちょうどよかった。さっき買ったやつなんだ」

彼は肩からさげたバッグの中をごぞごぞ探すと、何やら四角い缶を取り出した。

「こういうの好きかなと思って」

「わぁ、缶入りドロップだ!しかも可愛いやつ!」

普通に売ってるパッケージとは違う、お洒落で素敵な幾何学模様。

コラボとかの限定商品とかなのかな、きっと。

「めずらしくて思わず買ってしまった」

「いいの? もらっちゃっても?」

「うん。もらっちゃって」

「ありがとう!大事に飾るから!」

「中の飴は食べてね」

「大丈夫。あ、一緒に食べよ」

私はさっそく缶を開けると「はいどうぞ」と彼に差し出した。

缶を振って、それぞれ一粒ずつ飴を取り出す。

(幼いころは、自分が食べたいやつが出ないからって、何度も振ったりしたっけ……)

ちょっと懐かしくて、なんか楽しい。

「私、チョコだ」

「僕はミント」

「ええーっ」

「ミントがよかったの?」

「それたぶん私のだよー。名前書いてあったでしょお?」

「いやいや、それは無理あるでしょ。っていうか、もう口の中だし」


こういうバカバカしいやりとりにも、彼は笑ってつきあってくれるんだもん。

本当、大好き……。


「あーあ、私のミントが……」

「じゃあ、あげようか」


(えっ……!)


すごい不意打ちだった。

びっくりして、びっくりしながら目を閉じると――チョコレートにミントの味が加わった。

こんなキスのされかた初めてだし。

諒くんにしては、ちょっと強引な感じというか。

もちろん、それが嫌とかそういうんじゃなくて。

すごくドキドキするのだけど、そのドキドキまで、とろとろ甘くとろけるみたいな――。

夢みたいに甘くて。

ふんわりあったかくて。

とてもとても優しいキス。


「食べかけで申し訳ないけど」


諒くんがなんだか楽しそうな件!

くすりと笑う彼の肩に、私はこつんと額をぶつけた。


「……チョコミントになった」

「それは新しいね」

「諒くん」

「うん?」

「好き」


いつも好きだけど、今日もやっぱり好き。

たぶん、昨日よりもっと好きになってる。

そして、明日はきっと今日よりもずっともっと好きになってる。


「僕も」


彼はいつだって私の欲しい言葉をくれる。


「僕も大好きだよ、聡美さんのこと」


大きな彼の手が私の髪にふわりと触れる。

優しく頭を撫でられると、嬉しくて、きゅんとして、安心で――幸せすぎて泣きそうになる。


「今日、連絡くれてすごい嬉しかった」

「なんか急すぎかなって迷ったんだけど……」

「ぜんぜん。聡美さんて我がままとか言わないでしょ。だから、すごい嬉しくて“うあーっ!”てなったよ」

「“うあーっ”て???」

「そう。けっこう舞い上がってさ。ドラッグストアで胃腸薬選んでる場合じゃねえよ!って。あ、ちゃんと買ったから大丈夫なんだけどね」


決まり悪そうに微笑む彼が愛おしい。

(諒くん、大好き)

今日は驚くことがいっぱいあったけど。

でも、何かあってもなくても、諒くんに会える放課後は、私にはいつだって特別で格別なんだね――。