ファミレスへ行く道すがら、コミ―は「洗いざらい」って感じで色々話してくれた。
「朔と私は同小で。あ、中学は別ね。それで、小学校んときも二人とも吹奏楽やってて、高校で再会してなんとなく……ね」
「私、ぜんぜんわかんなかったよ。ふたりがその……つきあってるなんて」
「そりゃあ気をつけてるもん。バレたら面倒でしょ? ほら、ウチらのクラスってクラス内恋愛禁止みたいな空気あるし」
「ええっ」
「ちょっと何? “ええっ”て??? 溝ちゃんはそういう空気感じないわけ?」
「う、うん……」
考えてもみなかった。
だって、ウチのクラスって男女の仲がフラットな感じっていうか。
女子同士でも中学のときみたいに派閥で反目し合うみたいなことは皆無だと思ってた。
でも、コミ―の捉えかたは少し違うみたい。
「クラス内でつき合ったからってハブられるとか、そういうアホなことはないでしょうけどね。でも、みんな平和主義だからさ。すごい気ぃ遣うでしょ。よくも悪くも。それが面倒くさそうっていう」
「私、ぜんぜんそんなふうに思ったことなかったかも」
「女子の中には自分の立ち位置に敏感なコはいるし。男子なんかだと、いつも同じコばっか見てるわかりやすい人もいるね。今のクラスの雰囲気が悪くないだけに、逆に波風立てられないみたいな」
「そっか、私ってにぶにぶだね……」
「溝ちゃんは“我が道を行く”人だもん。それに、彼氏さん他校の人だしさ」
「我が道を行く人……」
「あ、空気読めないとかじゃないわよ。なんていうか、溝ちゃんて女子の間で巧くバランス取ろうとしてヘンな動きしたりしないし。自分は自分って感じじゃない? そういうのいいよね。池澤なんかもさ、溝ちゃんのそういうとこが好きなんだろうね」
(ハルピン?)
いきなりハルピンの名前が出てきて少し驚く。
でも、コミ―はさらに私を驚かせた。
「池澤も知ってるんだ。朔と私のこと」
「ええっ!?」
ハルピンとコミ―が同中だっていうのは知っていた(同小ではなかったみたいだけど)。
でも、だからといってすごく仲良くしている感じは……って、私が知らないだけ???
「池澤とは同中だからね。生活圏が近いっていうの? 朔は私と同小だし。で、朔の家の近くで一緒にいるとこを、偶然見られたことあって……」
「なるほど」
「俺んちパン屋なんだよ。で、薫(かおる)が遊びに来てた日に、ちょうど池ちゃんがパン買いに来てくれてさ、それで」
(薫……)
ウル君のお家がパン屋さんってのも初耳だけど。
それよりも、ふたりが彼氏彼女でいられるときは「朔」と「薫」なんだなぁって。
そっちのほうが「へぇー」と思ってしまった。
「池澤、やっぱり約束守ってくれてたんだ。親友の溝ちゃんにも黙ってるって、流石!」
「それはそうだよ。だってハルピンはそういう人だもん。約束は絶対。信頼できるもん」
自信満々で誇らしげな私に、コミ―とウル君は顔を見合わせて笑った。
「ほんっと、二人は仲いいのな」
「池澤も我が道を行く人だもんね。中学んときからそう」
「私からすればコミ―だってそう見えるよ? 」
「まあ基本的には同じ路線だと思うんだけど。でも……」
すると、言葉を濁すコミ―にかわってウル君が言った。
「吹部ってさ、女子ばっかだろ? だからどうしても、マイペースってわけにもいかないんだよ」
「そーゆーこと。あーあ、面倒くさい」
げんなりと溜息をつくコミ―を、ウル君が「まあまあ」と慰める。
「とりあえず、山盛りポテトフライ食おうぜ」