彼が笑顔になると、私も一緒に嬉しくなる。

それにしても、諒くんって部活の話をあまりしたがらないような? 私の考えすぎ???

そもそも、あまり根掘り葉掘り突っ込んで聞いたこともなかったけど。

でも、文化祭においでよって誘ってくれてるし、それほど気にすることもないのかな?


「聡美さん、受験生向け相談コーナーってあれのこと?」

「えっ」


(あっ、コミーだ!)


彼が指さすほうを見遣ると、ちょうど中からコミーが出てきたところだった。


「コミー、これ。ごめんね、ちょっと遅くなって……」


私がメイド衣装一式が入った袋を手渡すと、コミーは優しく微笑んだ。


「ううん。相談コーナーの時間がけっこう伸びちゃってたから、ぜんぜん平気」

「ならよかったけど……。あっ、コミーって靴何センチ?」

「ん? 24だけど?」

「じゃあ大丈夫かな。私、3.5なんだけど、ちょっと緩かったから。4なら平気かもだけど」

「そうなんだ? じゃあ、履いてみて必要なら調整してみるわ。ありがとう」

「そういえば、ウル君って――」

「えっ、漆原!?」

「なんか、探してるみたいだったから」

「ああ、うん。ここに来たよ、うん……」

「そっか、ならよかった」


私がほっとした顔をすると、コミーはなぜだか向こうで待っている諒くんをちらりと見た。


「彼氏さん、だよね? このまえ見かけた」

「あ、うん」

「優しそうな人ね」

「えっ」


コミーから彼のことを言われるなんて思ってもみなくて、ちょっと意外だった。


「すごくお似合いだと思う。このまえもそう思ったけど」

「あ、ありがと」

「…………羨ましい」

「え?」


(今、なんて???)


「じゃあ、私行くね」

「えっ、あ、うんっ……」


(コミー???)


私の聞き間違いじゃなければ“羨ましい”って……。


「お仕事の引継ぎ終わった?」

「うん……」

「どうかした???」

「うーん」


とりあえず色々見て回ろうと歩き出しつつ、諒くんに話を聞いてもらった。


「なんだろうね。好きな人がいるとか、彼氏が欲しいとか、単純に考えればそんなところだと思うけど」

「そうだよね……」

「でも、聡美さんはそういうのとは何か少し違う気がしたわけだ」

「うん……なんとなく、だけど」


“いいなぁ、私も彼氏欲しい~”みたいなそれとは、どうも違うニュアンスが。

本当、うまく言えなくてもどかしい。

私がもやもやしていると、諒くんはふいに言った。


「桜野って同じ学校の人同士で付き合っている人もいるんだよね?」

「もちろん」

「だよね」

「うちの部活でも2年のときに3年の先輩と付き合ってた人がいてね。今日は彼氏さんがOBとして来てるんだーって言ってたよ」

「ふーん」

「なんで?」

「いや、ちょっと聞いてみただけ。ほら、僕らみたいに他校で付き合ってる人が本当に多く見えたから」

「そっか」