それにしても、どうしたのだろう???

仕事着(?)のまま来るなんて。


「あのね、急なシフト変更があってね。それで、今日の私の当番は終了になって……」

「そうなの?」

「だから、すぐに一緒に回れたらと思って。あ、これ着替えてからって話なんだけどね」

「それでわざわざ伝えに来てくれたの?」

「だって、諒くんスマホ見てないときあるし。ここでキャッチするのが確実かと思って」

「ごめん、ありがとう……。じゃあ、着替えて戻るまでどっかで待ってればいい?」

「あ、でも……」

「うん?」

「お友達の皆さんが……」


(あ゛っ……)


ヤギの目をして僕を見る部活連中の視線が痛い。

ロクちゃんは肩を震わせながら笑いを噛み殺してるし。


(僕は、もう少し他人の目を気にすることを学んだほうがいいのかもしれない……)


それにしても、勝手について来たとはいえ奴らをどうしたものか……。


「あの、今日は文化祭に来てくださってありがとうございますっ」


(聡美さん!?)


ハキハキと喋って丁寧にお辞儀をする彼女に、思わずあっけにとられる僕。


「私のクラスでカフェみたいのやってるので、よかったら来てくださいっ。猫だけじゃなくて犬もいるのでっ」


そうして、テキパキとチラシを渡す彼女の営業熱心なこと。


「あと、囲碁部と茶道部とかるた部もよろしくお願いします!あちらにいる着物のコと袴のコがチラシ配ってるので。よかったらぜひ!」


確かに、着物姿の女の子と袴姿の女の子がニコニコしながらチラシを熱心に配っている。

さらに、その近くには着物男子と袴男子の姿も。


「ほーら、おまえらー。まずは猫耳メイドさんと犬耳メイドさんに会いに行くぞー」

「「「「うえーい!」」」」

「そのあとは袴女子とかるた取るぞー」

「「「「うえーい!」」」」

「そういうわけだから。諒は溝口さんと回って来いよ。適当にあとで合流しようぜ?」


(ロクちゃん……)


「うん。ありがとう」

「俺も久しぶりに溝口さんと話したいしさ」


(はあ!? 何だよ、その不敵な笑みは……)


「3人で旧交を温めようぜ? な?」

「私、六川君に何か奢らなきゃだね」

「おっ!じゃあ、楽しみにしとくわ」


ロクちゃんの奴、何考えてんだか……。

まあ、彼女はとくに気にしてないみたいだし、とりあえずよしとしておくけど。


「それじゃあ、私たちも行こ?」

「え?」

「よければ部室とか見てもらうのはどうかなって。あ、別にただのフツーの部室なんだけど。でも、なんていうか……」


彼女は言葉を選びながら、ちょっと困ったように微笑んだ。


「諒くん、学校での私のこと気にしてくれてるみたいだし。だから、普段の様子とか何か少しでも感じてもらえたらなって」


(聡美さん……)


「ありがとう。すごい嬉しいよ」

「よかった!」

「うん」

「ええと、それでは――」


はにかんだように微笑むと、彼女はそっと僕の手を取った。


「ご案内しますね」

「よろしくお願いします」