「溝ちゃん、私たちの他にも誰か会った?」

「うん。澤君と真綾さんに会ったよ」

「うそ!? 私も会いた~い!まだいるかな? 会えるかな?」


私が一緒に写真撮ったりしたよと伝えると、瀬野ちゃんは何やらスイッチが入ったようだった。


「私たちも撮ろ!ね!撮りましょう!」

「う、うん」


(瀬野ちゃん、はりきっているを通り越して、気迫を感じるよ……?)


やや困惑して諒くんを見上げる。

すると、諒くんはやっぱり察してくれて。

少しだけ困ったように優しく笑い返してくれた。


「じゃあ、まずは私と溝ちゃんね♪」


澤君たちと撮ったときのように、彼女同士、彼氏同士で、とりあえず。

それから、私と諒くんで。

そうしていよいよ、瀬野ちゃんと八代君の番になったのだけど――。


(八代君、ものすごい強張った感じなんだけど???)


「八代~、もっと寄ってくれなきゃ上手く撮れないよ~」

「お、おう……」


諒くんに返事はするも、ちっとも寄り添えていない八代君。

そして、瀬野ちゃんは――。

困ったような、淋しそうな、そんな表情でただ黙ってた。

こういうとき、瀬野ちゃんって「腕組んじゃおう!」とか言いながら、強引に行けそうなキャラに見えるんだけど。

たぶん、周りの友達カップルになら「もう!じれったいわね!」なんて言いながら、くっつけてあげたりするんだよね。

でも……。


「あの、このままでいいので。撮ってもらっていいですかあ?」


(瀬野ちゃん……)


八代君が頑なで、諒くんも私も口出しできる雰囲気じゃなくて。

結局、微妙な距離が縮まることのないまま。


ああ、なんだか切なさが拭えないよ。

なのに、男の子たちは乙女心を知ってか知らずか。


「三谷。そういや俺、二橋(ふたはし)らに会ったぜ」

「あー、面倒くさいね」

「会ったら絡まれるから覚悟しとけよ」

「はいはい。ご忠告どうも」

「おまえなぁ。じゃ、俺らもう行くわ」


すると、八代君は瀬野ちゃんに目だけで「行くぞ」と言って歩き出した。


「溝ちゃん、それじゃあまた学校でっ」

「う、うん」


(やっぱり、手つながないんだ……)


私は何とも言えない気持ちで二人の後ろ姿を見送った。