優等生の恋愛事情

八代君は浴衣じゃなくて、黒デニムにTシャツのシンプルスタイル。

肌が浅黒く焼けていて、精悍な顔立ちで、いかにもアスリートって雰囲気だ。

正直、私にはちょっと近寄り難いかも……?

瀬野ちゃんのカレなんだから、きっと真面目で優しい人なんだろうけど。


「あ!溝ちゃんカレに挨拶しないとだよね!」


(えっ、諒くんに挨拶を? 瀬野ちゃんが?)


「初めまして。カレが……優君がいつもお世話になってます♪」


ザ・女子力!

(瀬野ちゃん、なんか新妻みたい!?)


でも、八代君はというと――。


「別に、世話とかなってねえし」

「もう!優君!」

「いや、本当に僕は何も。むしろ、いつも世話になっているのは僕のほうなので」


諒くんが取りなすように苦笑いして間に入る。


(瀬野ちゃんと八代君って……)


澤君と真綾さんとは、なんだか様子が違っていた。

そりゃあ、性格だって違うし、つき合ってどれくらいになるかとか、つき合うまえの関係とか、みんなそれぞれ違うわけだし。

でも、なんていうかその……。


(この、八代君のぎこちなさって……)


会ったときから、ちょっと「あれ?」って感じがしてた。

瀬野ちゃんが私たちを見た瞬間、諒くんと私のつないだ手を見て「はっ」とした顔をしたのだ。

すぐに何でもないないみたく普通に話しかけてはくれたけど。

八代君と瀬野ちゃんの間には、なんだか微妙な距離がある。

距離っていうのは、物理的な距離のこと。

しかも、瀬野ちゃんは半歩遅れて隣を歩いているような感じで。

瀬野ちゃんは浴衣と下駄で歩きにくいのだし、諒くんや澤君みたいに気を遣ってあげてもいいんじゃない? って勝手に思ってしまうのだけど。


(硬派って、こういう感じを言うのかなぁ)