優等生の恋愛事情

それって、諒くんのお祖母さんのお家にってことだよね???

なんか、なんか、なんか、すごい展開なんだけど!


「自分の家族を褒めるのもなんだけど、二人とも良識のある気さくな人たちだから大丈夫だよ。祖母も、祖母の恋人もね」

「恋人……?」


祖父、ではないんだよね???


「うん。あれ? 言ってなかったっけ?」

「言っ……き、聞いてないよ?」


びっくり続きのこの流れっていったい……。


「そうだっけ? いや、たいした話じゃないんだけどさ」


いやいや、私からすると冒頭から(?)かなりたいした話っぽいよ?


「祖母は祖父と死別していて、僕がいる娘家族と同居をしていたんだけど。僕が中学に上がる頃、家を出ることになって。それで僕が家事をやることになって……ここまでの話は???」

「それは聞いたよ、うん」

「で、家を出ることになった理由っていうのが、恋人と暮らすためだったって。それだけの話」

「そ、そうなんだ……」


“それだけ”って……かなりもうドラマチックな話だと思うのだけど。


「もし馴れ初めとか興味あるなら会ったときにでも聞いてやって下さいな。ただし、長くなるのは覚悟の上でね」

「うん。了解ですっ」


和裁もできて、手芸も得意で、今は恋人さんと暮らしている諒くんのお祖母さん……。

会いに連れてってもらえるなんて、本当すごいっ。


「じゃあ、そろそろ行こうか。お店とか、まだぜんぜん見てないもんね」

「うん!」


(なんか、胸がいっぱいになっちゃうよ)


楽しことがいっぱい。

楽しみなこともいっぱい。


所狭しと立ち並ぶ夜店を、ふたりでゆっくり見て回る。

それにしても、今夜は本当すごい人出。

また誰か知ってる人にあったりして?

なんて思っていたら――。


「あ、八代」

「げっ!三谷かよ!」

「あっ…………溝ちゃん!」

「瀬野ちゃん」


案の定、瀬野ちゃんと八代君に遭遇した。


「溝ちゃん超きれい!浴衣めちゃめちゃ似合ってるし!」

「瀬野ちゃんこそだよ!髪とかもすっごい可愛いし。自分でやったの???」


瀬野ちゃんは淡いピンクの華やかな浴衣を上手に着こなしていて、ふわふわした女の子らしい感じがとってもかわいかった。

私と瀬野ちゃんは夏休みでも学校でよく会っているし、さほど久しぶりでもない。

それでも、こんなとこで偶然会えたのが、なんか妙に嬉しくて、思わずきゃいきゃい盛り上がる。

でも、彼氏たちはというと――。


「おまえさ、“げっ!”て何だよ?」

「いや、別に……特に、意味はねえけど?」


そりゃあね、いきなり熱い抱擁で再会を喜びあったりされても驚くし?