優等生の恋愛事情

諒くんが巾着から取り出したのは、薄紫色の和紙の小さな包みだった。


「開けてみて」

「う、うん」


受け取った包みを慎重に開く。

あらわれたのは、きれいなイヤリング。

(まん丸のガラス玉に、可愛らしい横縞模様? これって、夏祭りの定番のヨーヨー水風船だ!)


「あの、これ……」

「僕、の祖母からです」

「諒くんの……その浴衣を縫った?」

「そう。こういうアクセサリも作ったりする人で、生徒さんに教えたりしてるんだよ」

「ええっ、じゃあ手作り!?」

「うん」


びっくりしすぎて固まる私。

浴衣を取りに行ったときに、お祖母さんが渡してよこしたのだと諒くんは言った。


「僕は彼女と行くなんて一言も言わなかったんだけど。帰りしなに渡されたんだよね。一緒に行くお友達に差し上げて、って」


諒くんは困ったように笑った。


「こういう言い方はあれだけど、年寄りなめちゃいかんというか。暗黙のうちの了解みたいに僕も受け取って。一緒に行くのが野郎だったらどうしたよって話なんだけどさ」

「いや、なんか……うん、うん」


びっくりしたのと嬉しいのと、いろんな気持ちがいきなりぶわーって押し寄せてきた。


「よかったらつけてみてよ」

「あ、うんっ。私、ピアス開けてないからイヤリングでよかったよ」

「そうなんだ?」

「うん」


諒くんはあまりピンときてないみたいだったけど。

もしピアスだったら、せっかくいただいたのに、今こうしてつけられなかったもの。


「ど、どうかな……?」

「おおーっ。すごい似合うよ!」

「ほ、本当?」

「うん。すごく可愛くて、ものすごくきれいだよ」

「あ、ありがと……」


どんな感じか気になって、見てみたくって、スマホを手鏡にして確かめる。

すると、きれいなイヤリングが可愛く揺れて、浴衣にとても馴染んでいた。


「あのっ、ありがとう。絶対に大事にするね」

「うん」

「諒くんのお祖母さんにも……えーと……“友達”がとても喜んでいましたと……」

「それはもう、ちょっと白々しいよね」


諒くんが愉快そうに苦笑いする。


「聡美さんがよければ、今度一緒に遊びに行こうよ」

「えっ」