優等生の恋愛事情

拝殿を離れると、近くに座って休める場所があったので、ちょっと休憩することにした。

そうたいした距離は歩いていないはずなのに、やっぱりちょっと疲れたみたい。


「ラムネ飲む?」


諒くんが指さすほうをみると、お祭りの定番のラムネの暖簾が。

(水色にカタカタ赤字で「ラムネ」って書いてるやつ、懐かしい)

久しぶりに飲みたい気もするけど……。


「私、たぶん一本は飲みきれないかな」

「じゃあ一本だけ買って二人で飲めばちょうどいいね」

「え? あっ……」


話す間もなく、諒くんはラムネを買いに行ってしまった。

そして、あっという間に戻ってきて、開けたてシュワシュワのラムネを私にくれた。


「はいどうぞ」

「ありがとう。ごめんね、買ってきてもらっちゃった」

「ううん。たぶん僕のほうがいっぱい飲みそうだし」


ラムネを飲むの、いつぶりだろう???

含んだ瞬間、口の中が爽やかな甘さで満たされる。

ごくりと飲み込むと、ピリピリとした刺激と冷たさが喉の奥をかけぬけた。


「美味しいね。久しぶりに飲んだけど」

「僕も。飲むのかなり久々かも」


私がラムネを手渡すと、諒くんは一口飲んで「なんか懐かしい」と微笑んだ。

こういうとき、やっぱりきゅんとする。

“間接キスだよっ”なんて今さら騒がないのは、今までもわりと同じようなことがあったから。

今は、こんなふうに自然に「半分こ」できるのが素直に嬉しい。

なんていうか、私たちらしく、彼氏彼女になれてるような、そんな気がして。


「そういえば。諒くん、さっきの話って?」

「ああっ、そうだった。僕、大事なことを忘れてて。って……忘れてたことをまた忘れそうになってたかもしれない」

「諒くん……」


私も理屈っぽいけど、彼も負けじと理屈っぽい。

とりあえず、思い出せたみたいでよかったということで。


「聡美さんに渡したいものがあったんだよ」

「私に?」

「そう。これなんだけど――」