優等生の恋愛事情

ようやく拝殿の近くまでくると、まずは手水舎で身を清めて、それから参拝する人たちの列に並んだ。

たまたまタイミングで前に人がいたけど、とくに混雑しているわけじゃないみたい。

ゆっくり落ち着いてお参りができそうで、私は素直に嬉しかった。

遡れば、私がはじめてこの神社へ来たのは、お母さんのお腹の中にいたときになる。

安産祈願、お宮参り、七五三、毎年の初詣。

私にとって、ここは親しみのある大切な場所。

だから、好きな人とこうして来られてすごく嬉しい。

そりゃあまあ、ひたすら地味といえば地味なんだけどね、うん。

でも、諒くんはそんなの気にしないって知ってるから。


いざお参り、ということで拝殿の前へ。

お賽銭を準備しようと巾着をひらいていると、隣で諒くんが――。


「ああっ」

「ど、どうしたの???」


お財布忘れたとかなら、心配しなくても大丈夫だけど???


「いや、大丈夫。お参り終わったら話すね」

「う、うん」


気になりつつも、話はあとで。

私は神様にしっかりとご挨拶してお参りした。

まずは、ずっといつもの感謝の気持ちを。

それから――。

諒くんに再会できたことに感謝。

こうしていられる今に感謝。

そして――。

これからもこの幸せが続くことを祈る。

願いを叶えるために頑張ることを誓う。

そうして――。

どうか応援してくださいと神様に願った。


そっと静かに目を開ける。

視線を感じて隣を見ると、諒くんのまっすぐな視線とぶつかった。


(うわわわ、私ちょっと熱心すぎた? 諒くん引いてる? いや、諒くんに限ってそれは……)


「ええと……っ」

「いや、なんかきれいだなぁと思って」

「えっ」

「目を開けて隣見たら聡美さんがまだ真剣にお参りしてて。それがなんかすごいきれいで、思わず見惚れてしまったというか」


諒くんは「神様に怒られちゃうかなぁ」と小さく笑うと、丁寧に終わりの一拝のお辞儀をした。

私も気持ちを落ち着けて、しっかりお辞儀する。


(神様は怒ったりしないと思うけど、たぶん)


逆に、なんだか神様が笑っている気がした。

まるで「頑張りなさい」と背中を押してくれるように。