優等生の恋愛事情

諒くんはとっても興味深そうに食いついた。

でもほんと、そんなたいそうな内容じゃないんだけどな、うん……。


「あのね」

「うん」

「私が女子校で諒くんが共学だったら、どうだったのかなって……想像したの」


きっと心穏やかではいられないこと。

そういう自分が嫌になりそうって思ったこと。

別に隠し事を告白しているとかじゃないのに、なんだか「白状している」みたいな、そんな話し方になっていた。


「とりあえずまあ、諒くんが男子校ってよかったなぁということで……」


私が半ば強引に話をまとめると、諒くんは意外なことを言った。


「僕、聡美さんは桜野でよかったと思うんだ」

「え？」

「いつも学校のことを楽しそうに話してくれるでしょ？　さっき、澤君や真綾さんと話している聡美さんを見て、なんか安心したし嬉しかった」


（諒くん……）


「そりゃあさ、僕も同じ学校だったらと思うと余計に悔しかったりするわけだけど。けどそれは今さらどうしようもないからね。だから、聡美さんが楽しいのが一番。僕もそれが嬉しいかなって」


きっと、私の中学時代を知ってるから。

いつも感覚のスイッチをオフにして、淡々とやり過ごすのに集中していたあの頃。

諒くんは気にかけて見ていてくれたんだよね。


「あ、でも。僕、やきもちをやく聡美さんとか見てみたいかも？　絶対かわいいよね、うん」

「ええっ」


（な、何をっっ）


「とりあえずそうだなぁ、ロクちゃんとかにやいてみる？」

「諒くん、それはどうかと……」


六川君が同じ学校だからって「きぃー！羨ましいぃ！」なんて妬んだりはしないけど。

でも――。

そのうちたぶん、誰かや何かにやきもちやいたりするんだろうな。

諒くんのことが、好きすぎて。