もしも、私が女子校で諒くんが共学だったら?

たぶん……よせばいいのに、あれこれ心配して、それを全力で打ち消して、でもまた性懲りもなく考えて。

それでもって、不毛なことを繰り返す自分に嫌気がさして、なのにまた同じことを繰り返す……みたいな。


(なんか、そういう自分が簡単に想像できちゃうんだけど)


諒くん、優しいし。

頭いいし、整った顔立ちだし、責任感強いし、誰にでも公平だし、言葉遣いきれいだし、眼鏡似合うし、家事とか完璧みたいだし、堅実に貯金してるっぽいし、読書家だし、努力家だし……。


(ああもう、素敵なところを挙げればきりがないよ)


そういう彼だもの、周りの女の子が放っておくわけがない。

私みたく彼のことを好きになるコが出てきても不思議じゃないもの。

諒くんのこと信じていても、それでもモヤモヤしたりするんだろうな、きっと。

その挙句、モヤモヤしてる自分自身に不安になりそう。


“彼のこと、本当は信じてないんじゃない?”


そんなふうに追い詰められたりして……。


「あ、拝殿が見えてきたよ」

「えっ」


はっとして顔を上げると、諒くんが穏やかな瞳で私を見てた。


「聡美さん、何か心配になっちゃった?」


どうして諒くんは私の心がよめちゃうんだろ?


「ええと、なんていうか……心配する自分が想像できちゃって心配になったというか……」


理屈っぽい、なんて理屈っぽいんだろ、私……。

たいていの男の子はこういう女子をウザいって感じるものなんだろうな。

ウザいか、イミフか、イミフでウザいか。

でも、諒くんはそうじゃなかった。


「ということは、懸念すべき事象が実際に起きているわけではないという理解でいいんだよね? とりあえず」

「うん、まあ……」

「ならよかった」


諒くんは「うんうん」と頷きながら微笑んだ。


「私、不毛っていうか、しなくてもいい心配とか、本当意味ないのに……」

「どんなことを考えたら心配になっちゃったのか、聞いてもいい?」

「……聞くの?」


聞いちゃう?


「うん。ぜひ聞きたいな」