私は遠慮がちにたずねた。


「諒くんも、不安になる……?」

「そりゃあ、ならないと言ったら嘘になるかな」

「そっか……うん」

「あっ。決して信頼してないとかじゃないんだよ」

「うん」

「なんていうのかな、僕の場合は……」


諒くんは「うーん」と考えて、何やら言葉を選んでいるようだった。

そうしてから、決まり悪そうに言った。


「簡単に言うと“やきもち”なんだよ」

「やきもちって……ええっ、諒くんが澤君にやきもちやくとか、そういうこと!?」

「いやいや。ちょっと落ち着こうよ、聡美さん」


諒くんは軽くパニクる私を宥めるように微笑んだ。


「あのね、誰にとかじゃなくて、その状況に嫉妬するみたいな、そういう感じ? ありていに言えば“共学いいな~”ってやつ」


(共学いいな~って、男子校あるあるの!?)


「同じ学校で同じクラスだったりしたらさ、中学のときみたいに一緒に委員会の仕事したり。文化祭の準備で一緒にはしゃいだり。たくさん一緒にいて、ずっと見ていられるじゃない? やっぱり同じ時間を共有するって、すごく大きいって思うから」


(そっか、そうなんだ……共学だと同じ時間を共有する異性がいるだもんね)

一緒にすごすうちに自然と心がかわることも、なんて……不安に思ったらきりがない。

けど、多かれ少なかれ、相手が共学だとそういう心配を心のどこかに抱えているってことなんだよね。


「だからね、率直に澤君が羨ましいなって思うよ。もちろん、澤君には真綾さんがいるんだし、おかしな嫉妬なんてしないけどさ。澤君、いい奴みたいだし」


諒くんは「困ったもんだ」と言って、情けなさそうに笑った。