「だから知らねぇって言ってるだろ!」
次の日、また病院に行くと、病室の中から聖くんの怒鳴り声が聞こえた。
開けるとそこには荒れ狂う聖くんと、泣き崩れるおばさん、そして静かに立ち尽くす先生。
「オレが病気?脳に腫瘍?
そんなこと信じられるわけねぇよ!」
一瞬、耳を疑った。
「聖夜、本当なの。
あなたの頭の中には腫瘍があってそれを取らないといけない、だから明日から治療を……」
「だからそれが意味わかんないんだって!」
聖くんは、自分が病気だということも忘れていた。
「オレが今ここにいるのは事故ったから。
ただでさえ留年とか意味わかんないことになってるし、次は病気だ?
知らねぇよそんなこと」
「治さないと、キミ死ぬよ?」
冷静沈着に先生が言った。
その声は誰もが恐れるくらいに低くて、背筋がゾッとした。
「今までキミはずっと頑張ってきた。
その努力を無駄にするのか?
キミを産んでくれた親御さんを泣かすのか?」
先生が怒ったところを私は初めて見た。
きっとそれは聖くんも同じだと思う。
じっと下を向いて涙を堪えている。
「そして、キミをずっと支えてきた彼女を裏切るのか?」
先生が私を見たのに合わせて、聖くんも顔を上げた。
「美央……」
「聖くん…今まで頑張ってきたことを無駄にしないで……」
せめてもの願いだった。
「……お前には関係ねぇよ」
心臓がドキドキして、呼吸するのが精一杯だった。

