「聖くんお土産買ってきたよー!」
「おー美央、気が利くな」
「それは元々」
聖くんは毎日リハビリを頑張って、少しずつ左手を動かせるようになった。
相変わらず私との記憶はないけれど、毎日来てたくさんおしゃべりをする。
聖くんの中の私は今、どんな存在なのかは気になる。
「おー!オレの好きなプリン!
よく分かったな?」
「そりゃあ私は聖くんのことなら何でも分かりますよ」
「へぇー、何かよくわかんないけどありがとな!」
「よくわかんないってどういうことよ?」
「だってオレ、前の記憶が全然ないんだもん。
気がついたら病院にいて、気がついたらお前がいて…
なぁ、美央とオレってどんな関係?」
突然の質問に戸惑った。
「幼なじみ……兼、彼カノ」
聖くんの顔が固まった。
「いやいや嘘つくなよー…ってマジ?」
笑い飛ばそうとしたけれど、私の顔を見て真面目な顔で問いてきた。
「うん、マジ」
あーマジかぁ……
と、プリンにかけていた手を下ろして、ベッドに横たわった。
「ごめん、オレ全然覚えてない」
心がちょっと痛かった。
「大丈夫、私が覚えてるから」
私が覚えていれば大丈夫。
それだけで、私たちの心は繋がってるから。
「ごめんなぁ美央」
何度も何度も聖くんの謝る声が聞こえる。
顔は腕で隠してるから見えないけど、聖くんの方が辛い顔をしてると思う。
「言ってくれてありがとな」
いつか、必ず思い出してくれると信じてる。
あの日に戻りたい……
そう思ってもできなくて
心の内で密かに願い続けるだけだ。