学校に着くと早速、聖くんは囲まれた。
「聖夜くん久しぶり〜!」
「もうずっと会えてなかったから寂しかったよ〜」
「もう元気になったの〜?」
次々と声をかけてくる3年生の先輩たち。
「ねぇ、あれって聖夜先輩だよね?」
「復帰したんだ!嬉しいー!!」
かと思えば、2年生の先輩たちもはしゃいでいる。
「な、なんだこれ……?」
話には聞いていたけど、まさかこんなにすごいとは想像していなかった。
聖くんは、顔はそんなに良くないと思う。
でも優しくて面倒見がいいから、女子生徒や先生に人気がある。
「聖夜先輩!
久しぶりに会えたんですから、放課後お茶しに行きましょう!」
あゆみ先輩が甘い声で聖くんに言い寄っている。
彼女は2年生で、聖くんとは1年生の時に交流会でペア学習をしたとか。
大して可愛いとは言えないが、甘え上手な人。
「あゆみ先輩にはラブラブな彼氏がいますよね?」
いてもたってもいられなくなって、私は聖くんを囲む集団のど真ん中に割り込んだ。
「な、なによあなた。
いきなり割り込んでこないでよ!
聖夜先輩が困ってるでしょ?」
「そのお言葉、そっくりそのままあなたにお返ししますっ!」
あゆみ先輩は、私と聖くんが付き合っていることを知らない。
あゆみ先輩だけではない。
智香と、裕翔くん、そして景汰くん以外のこの学校の人はみんな知らない。
だから今の私の言葉があゆみ先輩に火をつけてしまったみたいで、ギロッと私を睨み返した。
その瞬間……
「せんぱーい!助けてくださいよぉ。
私はただ、先輩と会えて嬉しかったからいっぱいおしゃべりしたいだけなのに……」
目をウルウルさせながら聖くんの腕にギュッとしがみついた。
プチン
「……ないよ」
「え?」
「ふざけんじゃないよ!
早く聖くんから離れてよバカ!」
「きゃっ!ちょ、痛い!」
「ちょっと美央、何してるの!」
慌てて智香が止めに入った。
「離れて……離れてよ!」
このときの私は、もう自分でも止められなくなっていて、力づくであゆみ先輩を聖くんから引き離そうとしていた。
「いい加減にしてよ!
なんなのよあんた。彼氏いるでしょ?
それなのになんで聖くんに色気使ってんのよ!
早く離れてってば!」
「痛い……!」
「美央やめろ!」
聖くんの怒鳴り声が大きく響いた。
「その手、離してやれ」
「なんで……?」
「痛がってるだろ」
「やだ」
「はぁ……」
はぁ……?
なんで、ため息をつくの?
「ほら、離し……」
「……や!」
気がついたら、私の手を掴んでいた聖くんの手を、思いっきり振り払っていた。
驚いて、少し悲しそうな顔をしている聖くん。
「あっ、美央!」
後ろから聖くんの声が追いかけてきたけど、私は構わず走った。
あんな顔、見たくなかった。
ため息なんてついてほしくなかった。
あの人をかばってほしくなかった……!

