「お兄ちゃん」
「今度は何?」
「……名前で呼んでも、いい?」

一瞬目を見開いて、すぐにやさしく笑った。

「俺も呼んで欲しいって思ってた」
「……友哉くん」
「なーに? 杏奈」
「ふふっ、なんかくすぐったいね」
「確かに」

二人で顔を見合わせて吹き出した。

最期だなんて嘘みたい。
ずっとこのまま幸せが続くような気がする。

お兄ちゃんと一緒にいるから、かな?

「目瞑って?」
「うん」

言われた通りに目を瞑ると、 友哉くんのあたたかさが唇を通して伝わった。

「友哉くん」

彼の名前を呼ぶ私の声は、微かに震えていた。
どうしてだろう。涙が止まらない。

これは嬉し涙なのか、悲し涙なのか。

終わらないでと思ってしまう自分がいる。

神さま、もう少しだけ……時間をください。