「波琉くん、結果発表始まるみたいだよ」



オレは...顔を上げた。


会場の照明が落ちる。


暗くなった体育館は一気に静まり返る。


赤星は、今、どんな顔をしているのだろう。



「大変お待たせ致しました!それでは、今年のミスターアンドミス光蘭の結果発表をしたいと思います!」


「うぉーー!」



歓声が体育館を包み込む。


オレは前を見た。


どうでもよくないはずがない。


オレの頑張りを、オレの1ヶ月を、1番近くで支えてくれたアイツのためにも負けるわけにはいかないんだ。


アイツの分まで、オレは最後の最後まで奇跡を信じる。



「では、第3位から...」



緊張感で再び静かになる。


唾を飲み込む音でさえも聞こえて来そうな雰囲気だ。


オレは両手を交差させて祈った。


頼む、まだ、まだ出ないでくれ!



「第3位は...エントリーナンバー8番、白鷺未悠くん」


「えっ!ええーーっ!おれっすか?!」


「はい、おれ、っす」


「やったー!やったよ、百合野ちゃーん!」



ん?


百合野...ちゃん?


ということは、まさか...。



「では、一言お願いします!」



白鷺がキラッキラの笑顔を振り撒いて中央のマイクスタンドまで歩いてくる。


いったい何カラットなんだよっていう笑顔は、男のオレでさえ、可愛いと思ってしまう。


純真無垢で弟みたいなヤツだけど、今日もやってくれるはずだ。


白鷺は深々と一礼してからマイクを握った。



「投票して下さった皆さん、ありがとうございました!急なんすけど、おれはここで1つ誓いを立てたいと思います!」


「おーっと、宣誓ですか!」


「はい!では、言わせて頂きます!」



白鷺が息を吸う音が聞こえた。


白鷺の覚悟が耳を通して伝わってきた。



「宣誓!私、白鷺未悠は、園田百合野さんを幸せにすることを誓います!」



やっぱり。


ってか、いつの間に?


お化け屋敷で急接近したのか?


いや、待て。


確か、昨日百合野は、白鷺のことを"未悠"と言っていたような気がする。


つうことは...一昨日?


一昨日なんかあったのか?


まあ、ひとまずそれは置いといて、良かったな、白鷺、百合野。


百合野は壇上に呼ばれ、白鷺の隣に並ぶと、嬉しそうに頬を赤らめた。



「おめでとう、未悠」


「ありがとう、百合野ちゃん。そして...大好き!」



白鷺が百合野に抱きついたところで、司会者がこほんと咳をし、場の空気を締め直した。



「では...続いて第2位の発表に移ります。第2位は...」



ここで呼ばれても、まあ、実力の範囲内だと思う。


オレは再び祈ったが、呼ばれたのは学年トップレベルのイケメンだった。


これで残るはグランプリのみ。


オレは奇跡を信じる。


最後の最後まで諦めないと決めた。


祈るな。


堂々としろ。


オレは自分に言い聞かせ、前を見据えた。