嵐を呼ぶ噂の学園③ 大嵐が吹き荒れる文化祭にようこそです!編

「は?」


「だから何度も言ってるじゃないか。ミスターコンテスト当日は、特技披露と胸キュンシチュエーションの再現の2つのミッションがあるって」


「そんなの、百合野から聞いてない!オレはやらない。今からでも止めてやる!」


「青柳先輩、おれと一緒にやりましょうよぉ!せっかく人気も出てきたんですし、ねっ?」



ざけんじゃねえ!


そう叫びたかったが、出来なかった。


甘く見ていたのは自分だと気付いたのだ。


そんな簡単に大金が手に入ったら働く意味なんて見出だせない。


苦労して手に入れたからこそ、給料日に銀行に行くのが楽しみに思えたり、ボーナスで飲む酒が美味しく感じたりするんだ、きっと。


青柳波琉、反省します。


世の中のサラリーマンの皆様、申し訳ございませんでした。



「ってことで、あとは当日まで自主練。次は文化祭の1週間前に集まって当日の衣装合わせとか簡単なリハーサルとかをやる。それでいいかな?」


「赤星先輩、オッケーっす!」


「白鷺以外は?」


「はいっ、大丈夫です!」


「分かりました!」



納得してないのはオレだけみたいだ。


一応、はいとだけ返事をしておいた。



「んじゃあ、解散!」



解散となると、真っ先にオレのところに白鷺が近付いてきた。



「お疲れっす、青柳先輩!」


「ああ、お疲れ」



妙に馴れ馴れしく、チャラチャラしているコイツは、なんと、百合野の恋の相手だ。


ベビーフェイスで身長は168センチの小柄。


アネゴ肌の百合野には守ってあげたくなる対象なのかもしれない。


百合野から自分のことについて相談されているともつゆ知らず、オレに懐いてしまった。


赤星とかほど先輩風吹かせているわけでなく、穏やかな風を纏っているから、白鷺はオレを選んだのだろう。



「あのぉ、青柳先輩って、こと先輩と知り合いだったりします?」



...おいおい、マジかよ。


なんでそっちに行く?



「まあ、普通に友達だけど」


「わあ!そうなんすか!なら、話は早いっすね。ぶっちゃけ、こと先輩、カレシいちゃったりします?」



ああ、まずい。


色々とヤバい気がする。


でも、なんとかオレが軌道修正しなきゃな。


そうだ、オレがなんとかするんだ!



「星名は今フリーだけど」


「だけど...?」



いちいち相槌入れるな!


と言いたかったが飲み込む。



「赤星くんも彼女のこと狙ってるよ。勝目ないから、無難な人にしといたら?オレの幼なじみでかわいいヤツいるから、紹介してやるよ」



そうだ、そうだ。


いいぞ、オレ。


と思ったのだが、白鷺は良からぬことを言い出した。



「いやぁ、さいっこーに燃えるシチュエーションすね!ワクワクしてきましたよ!」


「し...白鷺?」


「上等っすよ!オレの敵に不足なし!必ず、こと先輩を手に入れてみせます!」



マジか...。


どうすりゃいいんだ、オレ。


ひとまず、明日にでも星名を会わせるって言って百合野と会わせるか。


いや、でも、「なんすか、この人?なんでこと先輩じゃないんすか」とか言われかねない。


なら、普通に会わせるしかないか。


自然に幼なじみを紹介する感じで。



「失礼します。2年6組の星名湖杜です」


「あっ!来たーっ!」



あーあ...。


オレはもはや、とめもしなかった。


白鷺は星名に突進していき、がっつりハグしてしまったのだ。



「あのぉ、どちら様で?」



その前に言うことあんだろうが?!


ああ、もう、見てらんねえ!


なんでオレの周りは感覚が異常なヤツばっかりなんだ?


ほんと、


どうにかしてくれ。


誰か、助けてくれ!


...って、ああ!


コイツらを見ている場合じゃない。


オレ、これからバイトだったんだ。


解放されるのは万々歳だが、このまま置いていくのもヤバい気がする。


焦るオレをよそに、白鷺はしゃべりだす。



「おれは、1年の白鷺未悠(しらさぎみゅう)っていいます!ポスターを見て一目惚れしました!だから、おれと...」



星名は白鷺の口を右手で塞いだ。


星名、ナイスだ。



「軽々しく告白してはなりません!」



そういうと、星名は手を離した。


分かりやすくしょんぼりする白鷺。


オレは2人の動向を見守るしかなかった。



「あのぉ、でもおれ、本気です!好きになったら止まれませんから!」



うわあ、いってくれちゃうね、後輩くんよ。


敵が強かろうが、相手に拒まれようが諦めない姿勢...。


胸アツだ。


なんか、応援したくなってきた。


って、バカか、オレは?!


応援してどうする?!


これは阻止しなければならない恋なんだよ。


百合野に最初に頼まれたんだから、何があっても白鷺と百合野をくっつけるんだ。


お願いだ、


邪魔しないでくれ、


星名湖杜。