百合野にそう言われて来たのは、すごく風情と暖かみのあるカフェだった。
「いらっしゃい、百合野ちゃん。今日もいつもので良いのかい?」
「はい。あとこの人は普段水しか飲まない男でして。コーヒー初心者なんで飲みやすいヤツ、お願いします」
「分かった。ほいじゃ、淹れるまで少々時間がかかるからのぉ、好きなところに座って待ってておくれ」
「分かりました。波琉、あっち行こ」
オレは、飼い主の後をおとなしく着いていく犬のように百合野に着いていった。
店の一番奥の2人掛けの席に腰を下ろした。
なぜこんな展開になっているのか全く意味が分からないが、とりあえず百合野の話を聞くしかない。
「波琉、この前はごめん」
「は?」
席に着くないなや急に謝られてオレは混乱した。
どんな心境の変化だ?
あまりの変わり様に発する言葉がない。
「あたし、かなり嫉妬深いし、独占欲強めなんだよね。波琉にことちゃん取られるの嫌で、カノジョいるくせに、ことちゃんにまで好かれてるから嫉妬しちゃったんだ。だから、ほんと、ごめん」
「すっごくかわいいね、あなた」
声がした方を見ると、トレーにコーヒーを乗せたエプロン姿の若い女性が立っていた。
「お待たせしました、こちらが濃い目のホットコーヒー。で、こちらはカプチーノです」
「あっ、ありがとうございます」
「どういたしまして。では、私はこれで。2人共、青春(あおはる)楽しんでね」
女性はそう言い残すとマスターのところへと帰っていった。
「あれが噂の元看板娘か...」
「は?何のこと?」
「前にマスターから聞いたの。高校時代、苦学生で、学校に黙りながらアルバイトしていた子がいたんだって。うん、絶対、あの人だ。間違いない」
「へえ、そうなんだ」
オレが知らなかっただけで、色んな人がそれぞれの悩みをかかえながら生きてるんだな。
オレはカプチーノを一口飲んでみた。
優しいミルクの甘さとコーヒーのほろ苦さが絶妙に合わさり、複雑で深みのある味を出している。
コーヒー好きではないため豆の種類とか全くわからないが、美味しいということだけは確実だった。
百合野は涼しい顔をしてオレの何倍も濃くて渋いコーヒーを飲んでいた。
味覚の点では百合野の方が何倍も大人だと思った。
「いらっしゃい、百合野ちゃん。今日もいつもので良いのかい?」
「はい。あとこの人は普段水しか飲まない男でして。コーヒー初心者なんで飲みやすいヤツ、お願いします」
「分かった。ほいじゃ、淹れるまで少々時間がかかるからのぉ、好きなところに座って待ってておくれ」
「分かりました。波琉、あっち行こ」
オレは、飼い主の後をおとなしく着いていく犬のように百合野に着いていった。
店の一番奥の2人掛けの席に腰を下ろした。
なぜこんな展開になっているのか全く意味が分からないが、とりあえず百合野の話を聞くしかない。
「波琉、この前はごめん」
「は?」
席に着くないなや急に謝られてオレは混乱した。
どんな心境の変化だ?
あまりの変わり様に発する言葉がない。
「あたし、かなり嫉妬深いし、独占欲強めなんだよね。波琉にことちゃん取られるの嫌で、カノジョいるくせに、ことちゃんにまで好かれてるから嫉妬しちゃったんだ。だから、ほんと、ごめん」
「すっごくかわいいね、あなた」
声がした方を見ると、トレーにコーヒーを乗せたエプロン姿の若い女性が立っていた。
「お待たせしました、こちらが濃い目のホットコーヒー。で、こちらはカプチーノです」
「あっ、ありがとうございます」
「どういたしまして。では、私はこれで。2人共、青春(あおはる)楽しんでね」
女性はそう言い残すとマスターのところへと帰っていった。
「あれが噂の元看板娘か...」
「は?何のこと?」
「前にマスターから聞いたの。高校時代、苦学生で、学校に黙りながらアルバイトしていた子がいたんだって。うん、絶対、あの人だ。間違いない」
「へえ、そうなんだ」
オレが知らなかっただけで、色んな人がそれぞれの悩みをかかえながら生きてるんだな。
オレはカプチーノを一口飲んでみた。
優しいミルクの甘さとコーヒーのほろ苦さが絶妙に合わさり、複雑で深みのある味を出している。
コーヒー好きではないため豆の種類とか全くわからないが、美味しいということだけは確実だった。
百合野は涼しい顔をしてオレの何倍も濃くて渋いコーヒーを飲んでいた。
味覚の点では百合野の方が何倍も大人だと思った。



