ゆっくりと歩きながらの帰路。

夜になっても、まだまだ暑い。

風はあるけど、温風としかいいようがない。

ベタつく風が身体にまとわりつくようだ。

「こんな熱帯夜はさー、アイス食べなきゃ駄目だよねー。カッチャン奢ってあげるから、アイス買おうよー」

「え…、アイスってもう夜遅いですけど大丈夫ですか」

時計は23時を回っている。

「アイスは冷たいから、カロリーゼロなんだよ。大丈夫だって」

それは、どこぞのお笑い芸人のネタではないかと思ったけど。

黙って、王子について行く。

駅の近くにあるコンビニに入ると、ひんやりとして落ち着く。

アイス売り場の前で二人で並ぶ。

「いやー、食べたいアイスいっぱいありすぎる!」

無邪気な子供のように王子の目はキラキラと輝く。

本当にこの人、アラフォーなのかな?

整った横顔に見とれてしまいそうだ。

「王子って、意外と甘いもの好きですよね」

真剣にアイスを見ている王子に言うと、

「うん、大好き」

と目を合わせて、言った。

別に自分に対して言われたわけじゃないのに。

ダイスキという単語を言われた瞬間、

胸がギュンと痛くなった。

(やっぱり、この人のことが好きだ)

イケメンだから、だけじゃなくて。

素直にこの人のことが好きなんだ。

自分の心がそう言っているんだ。

「カッチャン、どれにする?」

「え、私は…」

王子と一緒にいる時間を大事にしたい。

そう、心から思った。