ご飯を食べ終えて。

王子のお母さんが買ってきたというケーキを食べて。

あっという間に夕飯会は終わってしまった。

テーブルの上を片付けて。

お皿を洗おうとしたら、王子に「そこまでしなくていいよ」と言われたけど。

「大丈夫です」と答えて洗った。

「じゃあ、俺も手伝うよ」

キッチンで王子と2人で立っていると。

不思議な感覚に陥る。

イケメンが今、こうして隣に立っていて。

ついこの間までは他人だったのに。

もう家にお邪魔して料理なんかしちゃって…。

思わず笑うと「どうしたの?」と訊かれたから、

「いや、展開早いですよね。近所だからっていきなりお家にお邪魔して料理しちゃうとか」

「近所って便利だよね!」

王子も笑った。

片付けが終わって、帰ろうとしたら、

「送っていく」

と言われて、「一人で帰れます」と言うと。

「だぁめ!」

と大きな声で言われた。

そういう心配性なところが、年の差を感じるというか…。

外に出ると案外、涼しいことに驚いた。

「カッチャン、今日はありがと。うちの両親めっちゃ喜んでたよ」

「そうですか。あんな料理でよければいつでも作りますよ」

「ずーと、家族で暮らしているとね。会話すらなくなるからね」

「王子はずっと実家暮らしなんですか?」

「え、あー・・・。うーん、一時期は違ったかな」

歯切れの悪い返事にこれ以上は聞かないほうがいいのかなと思った。

「それにしても、王子のご両親は寛大ですね。得体の知れない女がいきなり来て、料理作っても何も言ってこないんですから。ビックリされませんでした?」

「あー・・・、あの人たち。俺に興味ないから」

まさか、そんな返事が返ってくるとは思っていなかったので、「へ?」と声を漏らすと。

「あ、着いちゃったね」

王子は足を止める。

「じゃあ、気を付けて寝るんだよ」

「気を付けて寝る???」