今日もバイトに出かけたリカを見送って図書室へ移動した。
ノートを広げても、参考書を広げても全くやる気は起きない。
ただ時間だけが過ぎていく。1人、また1人と帰っていくのを眺め、ついに誰も居なくなってしまった。
広い図書室に1人だけ取り残された。

「佐伯さん。もうすぐ下校時刻だよ。鍵閉めるから帰って」そう言って来たのは…誰だっけ見たことあるけど名前が分からない。
「誰?って顔してる。僕は三年二組の西村だよ」

あぁ。西村くん。サッカー部主将で生徒会長だ。流れる汗はシトラスだとか何とか。
つまりはモテる人気者。
そんな事を考えつつ
「あっ、すいません。すぐに帰ります」
荷物を適当に鞄に詰め込みすれ違おうとすれば
「待って!そんなすぐに帰らなくてもいいじゃん」
はっ?と言う顔をすれば強引に手を引かれる。
思いのほか強く引かれ、思わずよろめいた。