「佐伯さーん。分かる。病院着いたよ」
微かに女性の声がする。
「結衣ちゃん、もう大丈夫だからね。息止めないで、深呼吸できるー?」
原田先生だ。
ゆうちゃんの声はやっぱり安心する。
朦朧とする意識の中で薄目を開けた。
視界がボヤける。ゆうちゃんだよね?

「バイタルは?」「処置室運ぶよー」「ルートとってー」次々と指示を出す原田先生。
「結衣ちゃん、点滴するからチクっとするよー」そんな痛み、今はどうだっていい。
「苦しい…助けて…。」胸を押さえ、丸まろうとする体を無理矢理、上に向けられる。
早く楽になりたいのに、苦しくてベッドの上でもがく。
「呼吸が楽になる薬、入れたから大丈夫だからねー」
「ゆっくり深呼吸してみてー」
先生の言葉を最後にそこからの記憶がなくなった。