振り返ると着席したままのお母さんは
「先生、結衣はこの先どおなりますか?」
「どお。とはどう言うことでしょう?」
「私が結衣を健康な体に生んであげられなかったから、あの子にこんな辛いことばかり…」
思わず着席し、目線を合わす。

「お母さん、それは違いますよ。お母さんのせいではありません。自分を責めないで下さい」

「結衣が救急車で運ばれる度に思うんです。私は後、何回この子のこんな苦しそうな顔をみるんだろうって。小さい頃から辛い思いばかりさせてきました。友達と走り回って遊んだり、汗をかきながら体育の授業を受けたり。そんな当たり前の事を結衣には経験させてあげられませんでした。今だってそうです。進路の決まった高校3年生の冬休みなんて、友達と遊んだり、恋愛したりして楽しむはずなのに、また病院で過ごさせてしまいます」